複眼はよく見えるの
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| ピーター・ファーブ 昆虫より | |
孫達とトンボ採りにいったときのことです。オニヤンマを手にして複眼について説明しました。「トンボはね、眼が1〜3万個もあるからよく見えるんだよ。すごいだろう」といったところ、「そんなに沢山あったら、どれを見たらいいか分からないね」と痛いところをつかれました。子供達にしてみれば、人間の眼の延長で考えますから無理もありません。
さあ、どう答えたら良いのでしょうか。私自身、漠然としか分かっていませんでしたから、調べる羽目になりました。
虫の目は多くの個眼が集まって複眼になっており、それぞれの個眼に神経が連絡しています(左図)。個眼1個のレンズの大きさは直径30ミクロン(0.03mm)。個眼はトンボでおよそ1万から2万8千個集まっており、1個1個のレンズの背後には125ミクロン(0.125mm)の焦点距離を置いて、1個のレンズに1箇所の光受容体が対応しています。
@眼は全体として動かない
Aレンズの焦点を合わすことが出来ない
などによって、一つの個眼は環境の一部分しか捉えることが出来ず、全体として上図のような荒い像しか映し出すことが出来ません。ただし、首は回転させることが出来るので、球面で360°まで見ることが出来るのが利点です。さらに、個眼が多いほど、細かいところまで見ることが出来ますが、複眼が100個以下ではほとんど周り全体の景色を見ることが出来ないといわれています。太古の三葉虫も複眼だったそうです。個眼の数は100個程度だったといわれていますが、徘徊型なので移動型に比べて、それ以上の数の必要がなかったものと思われます。
人間の眼は、絶えず目標となるものを探しながらピント調節しますが、昆虫の複眼ではピント調節機能はなく、画面は常に一定のピントに保たれています。したがって複眼は、
@焦点距離が短くてすむ
A網膜までの距離が皮膚1枚にも満たないほど短い
B空間分解能は悪いが、広い視野が得られる
C眼がコンパクトになる
D対象物を一つ一つの個眼で分解して1小部分として見るため、相手の物体が少しでも動くと個眼に映る分解像がすべて移動するので、微細な動きに対応できる。
などの利点が多く、小型化が可能になったというわけです。
このうち、とくに、Dは蝶の撮影をする場合に、忘れてはならないポイントです。すなわち、前後の動きに対しては、分解像が余り移動しないので「何かおかしいな」くらいで済み、それほど敏感に反応しませんが、左右の動きに対しては、分解像が全て移動してしまい、「すわ外敵」と敏感に反応してしまうからです。このことは、蝶の撮影をする人たちの常識にもなっています。
複眼を1個の単眼に置き換えると、焦点距離が非常に長くなり、360°の視野を持つ単眼を作ろうとすれば、レンズの重さが大変なものになり、頭を支えることが出来なくなるそうです。
ところで、皆さんも気づかれていると思いますが、昆虫は目を閉じることが出来ないので開いたまま眠るそうですよ。