季節型


 蝶の型にもいろいろあります。大別すると「季節型」、「地方型」、「異常型」の三つがあります。

@「季節型」は季節季節によって異なる型
A「地方型」は地方地方によって異なる型
B「異常型」は個体個体によって他のものと異なる形
という意味で使われています。

 ここでは「季節型」について記します。「季節型」の現れる主な原因は日照時間と温度差にあるといわれています。あまりにも気候変化が激しい北の地方や、1年中暖かい南の地方などには、ある一定の型しか現れず「季節型」は温帯地方のみに限られて見られます。それに対して、北の地方や、南の地方には「地方型」や「異常型」が非常に多く現れます。この2型は温帯地方にも広がっているので、日本にはこの3型が見られるわけです。

 季節型は通常、
@「春型」
A「夏型」
B「秋型」
の3型からなっています。

 「春型」は、3月から4月までに発生して、5月の終わりごろまで残っている型で、蛹や幼虫で厳しい冬を過ごしたために、小型のものが多く、飛翔も速くなく、動きはあまり活発ではありません。

 「夏型」は、6月から8月にかけて羽化するもので、幼虫と蛹の時代を、春の一番良い季節に育ったせいもあって、形は大きく、翅型は全体に丸みを帯びています。飛翔力は非常に強く、色合いも濃厚になります。夏型は10月の初め頃まで見られます。

 秋型は、夏型とほとんど変わりがないものが多いのですが、タテハチョウなどでは翅の凹凸が激しいものが出てきます。また、アサギマダラやスジボソヤマキチョウなどでは個体の大小に大きな差が出てきます。
以下に、「春型」、「夏型」、「冬型」の典型的な例を示します。
 いくつかの例を挙げてみましょう。詳しくは、「蝶の写真集」をご覧下さい。
サカハチチョウ春型    サカハチチョウ夏型
サカハチチョウ(表翅:春型)      サカハチチョウ(表翅:夏型) 

                             

サカハチチョウ春型 サカハチチョウ夏型
サカハチチョウ(裏翅:春型)      サカハチチョウ(裏翅:夏型)

                                  

 上の写真はサカハチチョウの「春型」と「夏型」です。サカハチチョウは「逆八」の名の通り、八の字を逆さまに書いた模様をしてるところからこう呼ばれています。ご覧のように、「春型」と「夏型」では別種かと思われるくらい翅の模様が異なっています。また、英語では「The Large Map Batterfly」といわれるように、裏翅などは「地図チョウ」と呼ぶのも納得がいきますね。
 この春型が生んだ卵から幼虫、蛹を経て夏に現れる蝶は、いわゆる夏型であり、この夏型の親が産んだ卵から孵った幼虫が蛹になると、これは必ず休眠に入ります。その後長い冬を越して、翌年の春、蝶になりますが、これが春型です。

ベニシジミ春型            ベニシジミ夏型
ベニシジミ(春型)      ミドリシジミ(夏型)

 この写真はベニシジミの「春型」と「夏型」です。ベニシジミはもっとも多くの人達に目撃されるもっともポピュラーな蝶ですが、ご覧のように「春型」と「夏型」があります。まずこのことを知っている一般の方は少ないと思いますが、もし知っているとしたらかなり注意力のある人ですよ。ご覧のように、「春型」は表面は明るい紅色ですが、「夏型」は著しく黒くなります。やがて、秋に発生する個体はまた「春型」に近くなります。夏型に比べると春型はそう多くはありません。というのも、夏型は5月頃から9月頃まで出現しますが、春型は4月だけしか発生しないからです。


 
冬を蛹で越す蝶は季節による違いが見られます。年に何度も世代を繰り返す蝶は「春型」だけ違っているものが多いようです。これは、冬の低温が蝶の紋様に関わっていると考えられているからです。サカハチチョウの「夏型」は、「春型」より生まれた蝶であるのに対し、「春型」の蝶は、「夏型」の蝶より生まれ、蛹で越冬した後、春に羽化するために紋様が異なるのだといわれています。これが本当かどうかを確かめた人がいます。つまり、冷蔵庫を使って、人工的に低温処理して「春型」を作ったわけですが、うまくいくそうですよ。でも、こういう実験は、面白半分でやらないようにしましょう。

春型と夏型のある蝶 サカハチチョウ、ベニシジミ、ナミアゲハ、キアゲハ、モンキアゲハ、スミナガシ、ゴマダラチョウ、ギンイチモンジセセリなど

 

キタテハ夏型          キタテハ秋型
キタテハ(夏型) キタテハ(秋型)

 キタテハの夏型と秋型です。翅をよく見ると、ぎざぎざですね。種名はPolygonia c-aureumですが、このポリゴニアとは英語のPolygonにあたり、多角形で角が沢山あるという意味です。つまり、ぎざぎざで彫りが深いという訳です。翅の縁がぎざぎざですね。春型や夏型は余り風采の上がらないキタテハも、晩秋に羽化するものは、ダンディーですね(写真右)。

夏型と秋型のある蝶 キタテハ、シータテハ、ルリタテハ、イシガケチョウ、ウラギンシジミ、キチョウなど

 

季節型の特徴をリストアップしておきましょう。

アゲハチョウ科 春型が小さく夏型が大きい。春型はギフチョウがいなくなるのと前後して発生しますが、小型である理由は、気温がまだ低いため熱の放出を避けるためと思われます。
シロチョウ科 夏型が大きく、羽の表面の黒紋が良く発達しています。
タテハチョウ科 夏型のほうが表面の斑紋が黒化しています。成虫越冬する種類では、越冬する秋型が越冬できない夏型に比べて羽の外縁の凹凸が激しいのが特徴です。
ジャノメチョウ科 眼状の紋が春型では小さく、夏型では大きい。


 前の例では、季節によって違いが著しい種類ですが、これほどではなくても、年に2回以上発生する蝶では、それぞれの間には多少の違いが見られます。まとめてみると以下のようになります。

低温 高温
小型 大型
淡い 濃い
尖っている 丸みを帯びている

 勿論、例外もありますが、昆虫全般に共通する傾向のようです。

 季節型のことを「衣替え」という人もいますが、熱帯の蝶でも「衣替」えをするそうです。すなわち、雨期型、乾期型とあって、その姿は別種かと思うほど変化するそうです。

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